BPO意見書への11月6日付け高市総務大臣談話の撤回を求める声明
2015年11月11日
民放労連関東地方連合会
執行委員長 渡辺 豊
11月6日、BPO=放送倫理・番組向上機構がNHKの「クローズアップ現代」の「出
家詐欺報道」に対し、「重大な放送倫理違反があった」という意見を発表した。
この中でBPOは「総務大臣がNHKに対し厳重注意をしたこと」に対し、「総務大臣が厳重注意の根拠とした放送法の条文は『倫理規範であり、総務大臣が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではない』」と述べ、総務省の対応を厳しく指弾した。
これに対し、高市早苗総務大臣は「放送法における番組準則は『倫理規範』ではなく、『法
規範性』を有する」「番組準則に違反したか否かの最終判断は総務大臣が行う」と反論した。あたかも、公権力が放送に介入することを宣言したかのような言い様である。
勘違いしてはならないのは、BPOが指摘しているように、放送法で言う「放送の不偏不党」は放送事業者に課せられた「義務」ではなく、これを守るべきは公権力である、ということである。
元々放送を所管する総務省が権力を濫用しないように作られたのが「不偏不党」原則で
ある。その時々の政権が放送に介入し、放送局の「不偏不党」を捻じ曲げないようにする
ことこそが、放送法の拠って立つところである。番組編集準則(放送法第3条の2第一項)
の性格は、法の実際的効果としては、精神的規定の域を出ないもので、放送事業者の自律
に待つほかないものであり、放送事業者は、自律の社会的あかしとしてBPOを設立し、
機能させているのである。さらに放送法では「法律に定める権限に基づく場合でなければ、
何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定めている。
高市大臣の「放送法における番組編成準則は『倫理規範』ではなく、『法規範性』を有す
る」「番組準則に違反したか否かの最終判断は総務大臣が行う」という談話は、「権力を縛
る」という放送法の主旨を全く履き違えたものであり、「憲法は国家権力を縛るもの」とい
う原則を忘れた自民党の憲法改正草案の根底、即ち「憲法は国民を縛るもの」という考え方に通ずるところがある。
もとより安倍政権においては、自民党によるNHK、テレビ朝日の幹部の呼び出し、「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」という安倍総理シンパの発言、NHKニュースが政治部の介入により「安倍チャンネル化している」という指摘など、放送局への介入姿勢が際立っている。また安倍総理が安保法制の国会論議真っ最中に、関西の安倍総理シンパ番組に出演するなど、自ら公正を欠く行動を指摘せざるを得ない。
よって私たち民放労連関東地方連合会は、公正なBPO活動を敵視し、放送事業者の自
律への努力をないがしろにする高市総務大臣談話に抗議するとともに、この談話の撤回を求めるものである。
以上